トリイロ

あまり勉強しない魔女。

ホラー映画ITは普通に感動する

ホラー映画結構好きなのですが、ITはずっと見たかったものです。売れ続けていますし有名ですよね。ホラー映画を見ると家の中の空気がおかしくなるので、我が家ではホラー映画禁止令があるのですが夫に予告して日時と体調を整えたうえで見ることにしました。

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 率直に言うとめちゃめちゃ良作でした!!!ホラー版スタンドバイミーって誰が言ったんだろう?ピッタリだと思います。調べると原作は小説で子供たちが活躍するITとこの子供たちが大人になったときのTHE ENDの内容は同時進行に進められているようです。映画にするうえで構成が大きく変えられています。第一部がITで第二部がTHE ENDこれが天才的!というか、この原作から映画にするうえで映画にしかできないことがやりたかったんだなと作品に対する監督の熱というか圧がすごいなと思いました。第一部と第二部の公開日は二年間の月日が開けられていて、岡田斗司夫氏はわざとなのでは?と言っていました。あの子供たちに流れている大人になるまでの時間、「あーあの子供がこんなふうな大人になったんだね」という親戚の子供に感じるあの気持ちを感じられるようにだそうです。まあ私は間違えてENDのほうを先に見てしまいましたが……のちにそれは私にとって素晴らしい順番だと感じました。(それはまた次回)

 ただしこの作品は子供を取り巻く環境が過酷でそれを助けようとする大人はこの映画の中で出てきません。もちろん意図してそういうシーンを作っているのだと思います。しかもこの映画に出てくる少女は父親からの性的虐待を受けています。この虐待や悲しい事件、親との関係に対して苦しんでいる子供たちとそれを周りに知られたくないという気持ちが、子供の演技のうまさもあってとてもよく描かれていますので自分と重ね合わせて具合が悪くなったり、普段は思い出さないようにしていることを思い出してしまう方が絶対いると思います。見るときは本当に自分が元気な時にしましょうね。

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↑紅一点のべバリーちゃんはめちゃくちゃ可愛い。

 

 

このIT(それ)ど呼ばれるピエロのモデルはジョンゲイシーだといわれています。子供をたくさん殺したペドフィリアです。ITは子供に近づいていくとき子供の名前を呼ぶんです。子供の犯罪防止サイトなどを見ると、よく言う「知らない人について行ってはいけません」の知らない人とは名前を知らない人。だと子供は思うそうです。冒頭シーンはまさに、子供に手を出す犯罪者が使っている会話そのものでリアル&気持ち悪い。作りこみがとにかく半端がなく子供たちが負い続けている傷がいろいろな形で表現されるのですが、それはITと子供にしか見えないという構図もさすがです。

 そこらへんはさすがなんですがホラー映画が好きな人には少し物足りないかもしれません。取り巻く環境はやばいですが、実際のグロイ描写はあまり出てこないです。それに、お化けにおびえる子供のシーンが多すぎて途中からお化け屋敷に引率する先生や親の気持ちになってしまいます(笑)

 とはいえ感動してしまいました。一番心が動かされたというか、わたしがこの映画好きだって思ったシーンがあります。ITにさんざん怖い目にあわされていた子供たちはITの本拠地を見つけて乗り込むんです。なんでわざわざ怖い目にあいに行くの?と友達にいわれた主人公の男の子は「このままあの家に帰るほうが僕は怖い」と言いました。

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↑そのセリフの時のビル(主人公)

ITはなかなかオシャレなドアの家に住んでるらしい。

 

このセリフを聞いたとき自分の子供のころの記憶がよみがえりました。私の母はヒステリーで家から出ていけと言われて外に放り出されていました。それが何度もあったこともあって、私は母に捨てられるかもしれないこの悲しみと恐怖に耐えるほうがつらいと感じて、行く当てもない持ってるものも何もない。それなのにもう暗くなった道を歩き始めたことがありました。虐待を受けた経験のある人はみんなこの気持ちを知っていると思います。自分の家が一番怖くて一番苦しい場所になったことがある人は思い出さずにはいられないでしょう。このセリフを言うビルにあの時の自分を重ねたあと、ビルはITの本拠地に入っていき、友達もついてきてくれるんです。もちろんとんでもないことになります。でも映画の最後やっぱり勝つんです。友達がいるから大勝利。それを見るとあの時の自分も供養されていく気がしました。あの時の自分にも苦しい思い出と、寄り添ってくれた友達と、春によく出てくる変出者がいたんです。映画のラストでそういう自分に寄り添えた気がしました。

最後ITは「これが恐怖か」と言って、みんなの前から消えていきます。あれがジョンゲイシーがモデルなのであれば、ITは子供のころ信じられない虐待を受けてきた大人の一人なんです。ゲイシーはピエロの恰好で子供たちに風船を配っているときと青年たちにひどいことをしているときが一番心が休まるときだったそうです。ITにとって恐怖とは自分のトラウマを思い出すことだったようにおもいます。

傷つけられてきた子供時代がある人間、その最中の子供、それを見て見ぬふりの大人。この関係がきれいに描かれている映画。自分の過去を思い出すのもあり、これからの生き方を考えるのもあり。いい映画でした。あの時の私に寄り添ってくれてありがと。

THE END 気が向いたらレビュー書きます!

adeyu!